本書は、入社8年目でハーバード大学MBAを取得しているエリート社員広川洋一が、異業種へと出向を命じられて、そこで戦略理論を活用し、周りへ働きかけながら出向先への課題にチャレンジしていく、著者の実話を基にしたビジネス小説になります。
逆境にさらされながらも、主人公広川洋一の主体性ある行動と事業立て直しによる懸命な取り組みにより、高い目標数値をクリアし停滞気味であった商品を飛躍させ、社員の士気までも向上させるに至った成功プロセスが書かれてます。
本書では、打ち合わせ内容や職場の雰囲気などかなりリアル感があり、ビジネスを成功させるためのプロフェッショナルマインドが大いに学べます。
事業を成功させる上で本書を通じて私が感じた戦略ポイントは以下になります。
①価格決定
儲かるための価格決定をするためには、売る側のロジックと買う側のロジックを抑える必要があります。
そのためには、それらロジックをつかむためのデータ収集が必要であることを説明しています。
②強固な組織体制
主人公広川は、内向き気味であった社員の雰囲気を自ら動き変えていきました。
経営目標を達成するには、組織の中に「戦略意識」を醸成させること、また上の層から変革していき、下を統率していく必要があると説明しています。
③戦略はシンプルに
著者の経験上、戦略は単純であるほど良い戦略でありうまくいくということ。
何に絞って、どこを目指し進めていくか、シンプルな戦略が良い結果をもたらすというものです。
④ターゲットを絞る
経営戦略の要諦は「絞り」と「集中」であることです。
絞りがあるから、戦略目標も明快であり、社員を動かす良い原動力になるということです。
これら、「戦略プロフェッショナル」として進めていく人材の条件として、3つ上げております。(以下引用)
(1)トップとして、強いリーダーシップを発揮する覚悟があること。
(2)新しい戦略を考え出す作業手順をマスターしていること。
(3)誰もやったことのない新しい戦略を実行に移そうというのだから、多少のリスクは気にせず、また何があっても「夜はグーグーとよく眠れる」性格であること。
ストーリー形式でビジネス理論を学べ、かつフェーズごとに戦略ノートとして解説も入っていますので、難解な経営戦略本が理解し難い方には、本書は分かりやすいのでオススメです。
以下、ためになった部分をピックアップします。
「その気になって見れば、情報は目の前にたくさんあるのさ。それに意味をつけて、社内に発信してくれる奴がいるかどうかだ」(P89)
なまぬるい会社に共通した特徴は、社員のエネルギーが内向していることである(P95)
プロダクト・ライフサイクルのセオリーだけは「完璧に」理解されることをおすすめする。あなたの仕事上の判断にモロに使えるからだ(P106)
事業戦略の問題点を解いていく時には、初めから大上段に構えず、何か一つ、おかしいと引っかかった問題からスタートして、なぜ、なぜ、なぜとチェックを広げていくのがいちばん効率がよいだろう(P125)
「絞り」とは、すなわち「捨てる」ことである。我々の経営資源には限りがあるから、何もかもやることはできない。だから「これはやめた」と割り切ることが必要になる(P262)