戦略思考とは一言でいうと、「不確実なビジネス環境において、明快な将来のシナリオを創る思考」である(引用)
突然いつもとは違う追い詰められた状況に立たされたり、すぐさま結論を求められた場合に、考える術がなくパニックになってしまうことはありませんか。
本書は、そのような思考のモラルハザードにならないように戦略思考のスキルについて書かれています。
刊行は約20年前ですが、現在でも十分活用できる要素が多々あります。
構成は、大きく2つに分かれて、第1部で「戦略思考」の身につけ方、第2部で戦略シナリオの構想について書かれています。
特に第1部の戦略思考が肝になりますので、取り上げます。
●第1部 戦略思考
思考のモラルハザードの原因として、大きく以下2つの思考があります。
「オペレーション思考」
今あるメカニズム(オペレーション)は完全なもの前提で考える思考。
幅を広げようとしない。
「ギャンブル思考」
当たれば良いが、突拍子もなくハイリターン・ハイリスクな思考。
これら2つの思考の特徴が非常に多いと著者は説明しています。
そして、これらのバランスを取れてるのが、「戦略思考」になります。
そして、戦略思考で必要な三つのスキルは以下の3つになります。
・具体的結論を出す力
・過去から将来まで構造を洞察する力
・リスクを伴う判断を行う力 (引用)
正直どれも難しいスキルだと思います。
ただ、トレーニングを積んでいけばだれでも身につくスキルであります。
第1部の後半からは事例演習が載っており、勉強になります。
私の経験上、スキルをつける最も良い方法は、早急な判断を求められるビジネス・職場の環境に身を置けば、失敗を繰り返し次第に質の高い思考スキルが磨かれるとかんがえています。
現在の場がそのような環境でない場合は、休みの日を活用して、日経新聞やビジネス雑誌を読んで自分がその企業にいる疑似体験をして、考える練習をしていくとスキルが上がっていくと思います。
この「戦略思考」を使って、第2部の「戦略シナリオ」で3Cや3Sなどのマーケティング要素から、収益基準や企業の価値基準などのものさしを用いて、事例を交えながら携わっていくことができます。
日々の仕事で重要な決断を求められる方はもちろんですが、今後クオリティの高いビジネスマンを目指していく方は、本書で戦略思考スキルを学ぶと良いでしょう。
多少難解な要素もありますが、繰り返し読み進めていくと理解できると思います。
以下、参考になった部分をピックアップします。
・日本人はどちらかというと方向が定まっている状況下で、効率よくオペレーションしていく能力は世界中で一番高いと思う。【中略】
しかし、今はそのオペレーション能力の高さがかえって足を引っ張っている。なぜなら、方向が定まっていないときに、実行しながら方向を定めていく訓練や教育を積んでいないからだ(P12)
・時間をかけて緻密な分析によって精度を高めようとするよりも、ざっくりとでもいいから短時間であるレベルの結論を出し、具体的アクションに結びつけることが重要である(P37)
・ビジネスにとって重要なことは、まず方向性を決めることだ。右か左か、上か下か、進むべき方向性を決めることである。それには、単純かつ定量的な〝課題の構造化〟が第1ステップとなる(P81)