問題解決・ロジカルシンキング

思考・論理・分析

「ビジネスの分野においても経験と人間関係に頼って仕事ができる時代は終わった。適切な情報に基づいて論理的に分析し、合理的に行動しなければ成果にはつながらないというのは、もはや常識である」(引用)

本書では、論理的思考の習得において、「思考」「論理」「分析」という流れで、考え方や手法について説明しています。

以下3つの視点について、それぞれ紹介します。
「思考」
「思考」とは、「思考対象に関して何らかの意味合いを得るために頭の中で情報(知識も情報の一部である)を加工すること」になります。
もっと掘り下げて説明すると、ある情報と別な情報を比べて違いを認識する作業になります。
そして、これらを分けることにより、分かるに変わることを指します。

また、正しく分かるようになるためには、以下3つの要件が必要になります。
・ディメンジョン
例えば、「カレーとケーキどちらが好きか」
「アメリカと北京どちらに行きたいか」など、これらは比較対象が対になっていません。
カレーであれば、定食やラーメンなど夕飯としての選択であったり、北京ならニューヨークやロサンゼルスなど都市での比較にしないと適切な比較対象とは言えなくなります。
このように、比較対象を同じ水準にすることをディメンジョンと呼びます。
仕事において複雑な内容がからみ合う時は、ディメンジョンを整える作業を行うと、頭の中で情報を整理する時に役立ちます。

・クライテリア
例えば、海外旅行がしたくてどこの国に行くか考える際、
「アジア、ヨーロッパ、オセアニア、アメリカ、アフリカ…」の場所を切り口にしたり、
「10万円未満、10万円〜20万円、20万円〜30万円、30万円〜40万円、40万円〜50万円、50万円〜」の値段を切り口にしたり
「治安が良い、お店のサービスが良い、日本人が多い、観光名所が多い…」の環境面を切り口にしたり、何かを選ぶ際はこのような分類基準がされると思います。
この分類基準をクライテリアと呼びます。
クライテリアは、固定化されると思考が限定的になるため、いかに幅(分類基準をたくさん持つ)を広げていくかが、大変重要になります。

・MECE
たとえば、人間という対象を分ける場合、性別というクライテリアでは「男と女」、血液型というクライテリアでは「A、B、O、AB」という分け方ができます。
これら、モレなくダブりなく分ける作業をMECEと呼びます。
MECEでは、選んだクライテリアから落とし込んでモレやダブりがないか突き詰めて考えていく必要があります。

この3つの視点を基礎に、「それは何であるか、どのようなものか、どのような関係になっているか」を考え、分かるようになっていくと思考成果が上がっていくと説明しています。

「論理」
「論理」とは、「根拠に基づいて何らかの主張(結論)が成立していること」を表します。
これは、根拠と主張をつなぐのが、「論理」ということです。
たとえば、「ここ3日間ずっと雨が降っている。だから今日は傘を持ち歩こう」という内容について、「3日間雨が降っている」ことを根拠として、「今日傘を持ち歩く」という主張が揃っており、この2つを繋ぐ道筋が論理になります。

論理を適切に構築する上での方法論として、「演繹法」と「帰納法」を上げています。
「演繹法」は、「既呈命題を大前提と照らし合わせて意味的包括関係を判断し、必然的命題を結論として導き出すこと」になります。
具体的には、「人間は笑う」という既呈命題があるとして、「Aさんは笑う」を大前提とすると、「Aさんは人間である」という論理が成立することを指します。
「帰納法」は、「複数の観察内容から共通点を見つけ出し、共通点から一般命題化すること」になります。
具体的には、「お洒落なAさんは美容師」(お洒落なBさんは美容師」「お洒落なCさんは美容師」という観察内容に対して、「美容師はみなお洒落である」との一般命題化することを指します。

本書では、この2つの手法を適切に活用するための方法論について説明しています。

また、この2つの論理構築をする前提として大事なのが「ファクト」(事実)になります。
論理が構築しうるファクトになっているか常に見ていく必要があります。

「分析」
「論理的思考」を活用して正しい結論を導くための最後の作業が「分析」になります。
分析というと、数字やグラフから何かを読み取るイメージがありますが、
本書での「分析」とは、「要素に分けること」
これは、分析対象を識別し、関係性を把握するために「構造化」して分かるようにしていく必要があると説明しています。
そのための要件としては以下3つです。
・目的の存在
分析する上で目的が明確か
・情報収集の必要性
分析するための情報(ファクト)があるか
・意味合いがアウトプット
目的に沿った結論となるか
この3つを意識して分析を行う手法について紹介しています。

多少難解な部分もありますが、本書をマスターすれば論理的思考をつけるための骨子が出来上がります。
論理的思考能力を高めていきたい方にオススメです。

以下、タメになった部分をピックアップします。
・われわれは思考によって得ることができる「それが何であるか、そしてそれはどのよつなものであるか」を分かるという「事象の識別」と、事象と事象とが「どのような関係になっているか」ということが分かる「事象間の関係性の把握」という二つの要素的思考成果 (中略) これら二つの要素的思考成果を組み合わせることによって〝すべての分かり得ることを分かることができる〟のである。P55

・「根拠」と「主張」によって「論理構造」が成立し、「論理構造」の中で「根拠」と「主張」を繋いでいるのが「論理」である。P86

・「ファクト」と「ロジック」が両方揃っていてこそ、われわれは論理的思考によって客観的に正しい結論を得ることができるのである。P145

・情報収集を手がける場合には「情報」を集めることと同等以上に、「ノイズ」を集めないことにも注意しなければならないのである。P175

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