本書は、やり手セールスウーマン「宮前久美」が、自身の希望で商品企画部へ異動し、自社(駒沢商会)の会計システムにおける魅力的な商品開発を目指していきます。そこで、凄腕マーケティング担当者「与田誠」からアドバイスを受け、新商品開発、会社のシェア向上を目指していくストーリーになります。
著者は、日本IBMにてシニアマーケティングマネジャーを担当されており、他執筆もしております。
内容は、マーケティングの基礎的内容で顧客満足の概念や商品戦略における優位性について、ストーリーに沿って紹介しています。
私が本書で勉強になったところを紹介します。
「言ったことしかやってくれない」
ストーリーの中で、会計システムについて顧客の要望を全て組み込んだ自社(駒沢商会)の商品に対して、顧客は自分たちの商品よりも高い他社(帝国建設)の商品を決めてしまいました。
その理由は、帝国建設では「会計システムの本来あるべき姿を提案してきた」とお話ししています。
これは、要望を全て受け止めた駒沢商会については、「言ったことしかしてくれない」という評価をつけられたということです。
顧客の要望に答えることがゴールではなく、顧客が商品を使う目的・意図を考え提案していくことの方が大切になります。
これは、普段の業務でも当てはまります。
単に上司から言われたからという理由で(出来は良くても)仕事していくだけの人と、業務の目的あるいは改善するべきところまで考えて提案するような人とでは、仕事の成果にも大きく差が開くでしょう。
「お客様の要望だけ答えても商品は売れない」
物語の主人公「宮前久実」は、社内プレゼンの中でお客様のご要望を全て組み込んだ商品企画を説明します。
しかし、「与田誠」はこれだと絶対売れないと言います。
なぜか。
そこには、要望を全て取り入れてるだけで、「どんなお客様を対象にしているか」「お客様は何に困って、その商品はどう応えていくのか」「要望されてる機能があればお客様は絶対買いたくなるのか」
などしっかりお客様の深層まで探っていく必要があり、それらを考えず表面上の部分だけで考えた商品は売れないということです。
これは、商品企画のみならず、採用活動や育成手法、クレーム対応など人が関わるものならどんなことにも当てはまります。
「バリューセリング」
本書でタイトルになっているコーラについて紹介しています。
同じコーラでもリッツカールトンホテルでは、ルームサービス用で1035円で提供しているとのことです。
これは、サービスという目に見えない価値を売っているからです。
同じ商品でもコンビニなどで買うコーラとは違います。
リッツカールトンの心地よい環境で素敵な人と窓から景色を眺めながら美味しくいただくという体験を買うため1035円という大金でも惜しまず払うのです。
このような商品そのものでなく、価値に裏付けされたものを「バリューセリング」といいます。
商品を売れるようにするためには、価格を下げるのでなく、バリューセリングの考えが大切になります。
マーケティングを勉強するときの入門書としてオススメです。
ラストには、各章におけるオススメ本も紹介しているのでマーケティングを学ぶ上で参考にしたら良いです。
以下、タメになった部分をピックアップします。
・「この新商品、どんなお客さんを対象にしているのですか?そのお客さんはなんで困っていて、この商品はどう応えてくれるのですか?そして、今回強化するとおっしゃる機能って、その機能があればお客さんが絶対に買いたくなるものなのでしょうか?」P43
・「リッツカールトンが売っているのは、心地よい環境で最高に美味しいコーラを飲めるという体験です。この体験は他では得られませんから、顧客は値引きを要求しません。」P167
・「カスタマー・マイアピアからの脱却が必要なんですよ」P170